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雪の小鳥で・・・・
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触れたら溶けて消えてなくなってしまう粉雪のように・・・。
脆く儚く・・・。
そんな彼女だから・・・・。
細々と小さな雪が降っていた。積もることもなく、地についたその瞬間になくなっ
てしまうような雪だった。どうせだったら一気に降ってしまえばいいのにと思う。そ
うすれば一回で終るんじゃないかな。なんて子供じみた考え方。
「はぁ・・・・」
息が白い。廊下は冷たく、あまり部屋から出たくないと思うのだけれどそうもいか
ないものだ。一日の仕事は朝から大量にある。・・・なぜ俺はこんなに働かなくては
ならないのか。そこに山があるからだ。嫌、意味が分からない。何故だ・・・・。・
・・・・。・・・・。
「あ?」
働く理由なんてふざけた事について思案していた俺だが、それは一つのおかしなも
のを見つけて阻まれた。否、俺はそんなことを本気で考えようとしていたわけではな
いので阻まれても特に何とも思わないのだけれど・・・・今はそれよりも気にかかる
ものを見つけたのだ。
木下に小さな血の跡があった。おそらく、小動物の屍骸がもとは其処にあったのだ
ろう。よく見ると、あたりの木々にも小さな血痕が附着していた。無残な死に方だ。
野犬にでも噛み殺され振り回されたか・・・。だが、俺は奥の森林へと行くように続
いた血痕も見つけ、目を細めた。誰かがあの屍骸を森の中へ持っていって埋めている
のか・・・。
俺は考えた。死神のなかでこんな事をするのは誰か・・・。もしかすると・・・・
そう思い、俺は血痕を辿って森の中へと入っていった。
冷たい森を歩いていくと小さな背中を俺は見つけた。
ああ・・・やっぱり・・・・。
「雛森・・・」
その背中に呼びかけると、小さな背中は一瞬ビクリと動いた。俺はこちらを向こう
としない雛森に近づき、隣にしゃがんだ。
雛森の前には小さな墓があった。立派なものではなく、手で作った質素なものだっ
た。本当にこいつは・・・・。
「小鳥だったの・・・・。」
ポツリと雛森は呟いた。そうか、と俺は頷く。他に何を言えばよいのだろう。すべ
てに優しく平等に愛を紡ぐこいつに俺は・・・・
「命ってこんなに儚いものなんだね」
グサリとその言葉が俺に突き刺さる。死神である俺たちは命が長い。虚と戦うから
いつも死と隣り合わせであることに変わりはないのだが、俺たちは簡単に百年、二百
年生きる。命の終わりに接することが少ないと言えよう。それなのに・・・この少女
は・・・
「何もかもすべてが儚く思えるの」
「いつか・・・今ここにあるすべてのものが消えて、なくなってしまうようで・・・
怖い」
「淋しいよ」
「それはお前が優し過ぎるからだ」とは言えなかった。それは俺が弱過ぎるから。
後に続く言葉が見つからなくて、そのせいで彼女を傷つけてしまうのが怖くて。情け
なくてしょうがない。こんな無力な自分は今すぐ消してしまいたい。
それでも一つ分かったことがある。それが本音か。いつも底抜けに明るい笑顔の下
に隠したお前の気持ちか・・・・。
なるほどな・・・。分かったよ。せっかく言ってくれたのに怖いとか思ってらんな
いよな。
それがお前の本音なら、俺はそれを包み込んでやろう。
それが俺の役目だから。
それが俺、自身が選んだ役割だ。
隣に立って弱さも涙も何もかも受け入れてやろう。それがお前に出来る唯一だか
ら。
「消えたりなんかしねぇよ」俺はそっと雛森の小さな手を握った。その手は土で汚
れていた。汚れていた・・・何て事を言うんだ・・・儚いもののために墓を造って
やった手をそんな言葉で冒涜するつもりか・・・それこそ最悪だ。土が付いているか
らってそれが一体何だって言うんだ。「誰も何も嘘なんかじゃない。お前は一人じゃ
ない。」お前を一人にさせない。
小さな小さな雪が降る。細々とゆっくりと・・・。
「日番谷君」
「ん。何だ?」
「ごめんね」心が揺り動く。「ありがとう」
その言葉は掠れていて意識を集中させていないと聞き逃してしまうくらいだった。
雛森。
儚くて脆いのはお前のほうだ。今にもお前が消えてしまいそうで無くなってしまい
そうで怖いのは俺のほうだ。
なら、守るしかないだろ。傍にいるよ。
粉雪のようなお前だから・・・触れたら溶けてしまいそうな・・・危ういお前だか
ら。
俺は傍にいる。
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コメント |
なんか暗い日雛です(悲)ホントは暗い中にも暖かみのある日雛にしようと思ったのですけど・・・
駄目でした(苦々)こんなんでも良かったらどうぞよろしくお願いします(凹) |
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written:ゆのえ
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